「覚えておこう。道徳的選択の必要なときは常にある。
そんなとき、一つの寓話、一冊の本、一人の人間と出会ったために、
違う選択ができることがあるものだ
---他人を思いやり、命をいとおしむ道を選択できることが」
エリ・ヴィーゼル
今年は「子どもの権利条約」が国連で採択されて30年です
ヤヌシュ・コルチャック(1878-1942年。本名ヘンリク・ゴールドシュミット)は、ポーランドが生んだ偉大な児童作家であり、小児科医であり、教育者です。子どもたちが衣食住を心配せずに 安心して過ごし、楽しく学べ、かつ家庭のようなあたたかさを持った場所を作ろうと、ユダヤ人の子どものための孤児院と、カトリックの子どものための孤児院を設立。子どもたちの父として生活をともにし、全生涯を子どもの教育と救済に捧げました。
また、教育書や新聞、童話、戯曲、ラジオ放送などを通して、世界のすべての子どもたちの福祉と権利を訴えました。子どもたちを尊重するという先生の夢は、死後47年を経て、コルチャック先生と孤児院の子どもたち国連の「子どもの権利条約」として実現しました。
コルチャック先生 関連図書
『コルチャック先生のいのちの言葉』
ヤヌシュ・コルチャック著、サンドラ・ジョウゼフ編著
(明石書店、2001年)
「子どもは未来ではなく、今を生きている人間である・・・」
コルチャック先生の子どもを見つめるあたたかい眼差しが心に響きます。

『コルチャック先生 子どもの権利条約の父』
トメク・ボガツキ作、柳田邦男訳
(講談社、2011年)
コルチャック先生の子どもたちへのあたたかい眼差しが伝わってくるような絵本です。コルチャック先生の生涯が分かりやすく綴られていて大人にもおすすめです。

『コルチャック先生』
近藤康子著
(岩波書店、1995年)
中学生から読めるコルチャック先生の伝記。第42回青少年読書感想文全国コンクール課題図書(高校の部)


Kokoroのおすすめ
『「ホロコーストの記憶」を歩く
~過去を見つめ未来へ向かう旅ガイド』
石岡史子 岡裕人著
(子どもの未来社、2016年6月)

メディアで
紹介されました

『エーディト、ここなら安全よ~ユダヤ人迫害を生きのびた少女の物語』キャシー・ケイサー著、石岡史子訳 (ポプラ社、2007年) ※小学校高学年から
ユダヤ人の子どもたちを守ったフランスの村モアサックを舞台にした実話。オーストリア生まれの少女エーディトは家族と引き離され、フランス南部の村の寄宿学校にかくまわれます。ナチスによるユダヤ人逮捕の危険が迫るたびに、村人たちはその情報を寄宿舎に届け、子どもたちはキャンプに出かけるふりをして山に隠れます。モアサックの村人たちの勇気によって、エーディトや500人を超える子どもたちの命が助けられました。わたしにだって、あなたにだって、きっとできることがある。そう思わせてくれる物語。

『あいつはトラだ!ベリゼールの はなし』ガエタン・ドレムス著、野坂悦子訳 (講談社、2010年) ※小学校高学年から
「あいつはトラだ!」の一言で、今まで友人だった相手への接し方を変えてしまうのが、私たち大人です。ためしに「あいつはトラだ!」の"トラ"の部分を変えてみればわかるでしょう。「あいつは○○だ」「あの人のお父さんは○○だから」・・・なんとなくイメージできたのではないでしょうか。
この本に出てくるベリゼールのようなトラの姿をした人間は、実在しません。でも、物語の中で大人がベリゼールに対してしたようなことは、周りを見渡してみれば、そこかしこで行われているのではないでしょうか。思い込みや先入観が生む悲劇に"われわれは敏感であるべきだ"。本書には、そんな作者のメッセージが込められています。
どうすれば私たちは、思い込みや先入観を捨てることができるのでしょう?子どもはベリゼールを恐れません。トラか人間かということは、子どもにとってどうでもよいことだからです。私たち大人に必要なのは、「あいつはトラだ!」と勝ち誇ったように言う者に対して、「どっちだっていいよ」と言える勇気なのではないでしょうか。大人にも読んでほしい本です。(ボランティア 東京都・教諭 山本)

『母からの伝言 ~刺しゅう画に込めた思い~』エスター・ニセンタール・クリニッツ作、バニース・スタインハート作、片岡しのぶ訳 (光村教育図書、2007年)
ホロコーストの体験をこんなにかわいい刺しゅうで伝える方法があるのか!と本当に驚きました。美しくあたたかい刺しゅうが伝えるのは、15歳のときにポーランドで家族と離れて妹と隠れ潜み、友や隣人に家を追われ、森に逃げた恐ろしい体験。戦争以前の貧しくても平和だった我が家の思い出。終戦を待ちながらカトリック教徒として農家で働いたこと。夢の中で励ましを与えてくれた母やおじいさんのことなど。絵を勉強したことはなかった作者のエスターですが、50歳のときに思い立ち、娘時代の体験を語り伝えたいという願いを針と糸にたくしました。作者は2001年に74歳で亡くなりましたが、ここまで彼女の思いが近くに感じられるのは刺しゅうならではだと思います。あんまりきれいで、そして悲しくて涙がでてきます。(N.M.)
