世界に向かって
叫べなかったことを
わたしたちはここに埋める
©Jakub Certowicz, for the Jewish Historical Institute
どうかわたしたちの
名前を憶えていて
ください
I only want my name and the name of my talented daughter, Margalit Lichtenstein, to be remembered.
ただ覚えていて
ほしいのだ。
妻のことを、
娘のことを。
I only wish my wife to be remembered, Gela Seksztajn. I wish my little daughter to be remembered.
世界は全てを知るべきだ
そしてこんな経験をせずにすんだ人たちは
喜ぶべきだ
The world must know all. Those who did not live through it should be glad.
二十世紀に何が
起きたのか
世界に報せ警告して
くれますように
May it alarm and alert the world to what happened in the 20th century.
1940年11月 ―
ナチ・ドイツ占領下のポーランドで、約45万人のユダヤ人がワルシャワ・ゲットーに閉じ込められる。その数日後、歴史家のエマニュエル・リンゲルブルム率いる一団が抵抗するために立ち上がった。
コード名「オイネグ・シャベス」(安息日の喜び)で知られるこの秘密のグループは、ペンと紙でナチの嘘やプロパガンダを打ち倒そうと誓ったのだった。教師、社会福祉士、作家、そして学生たちも、ゲットー内の残虐な暴行、略奪、飢えなどの実態を見たままに日記や絵、詩などに記した。
やがて、トレブリンカのガス室に向けてユダヤ人の輸送が始まり、ゲットーに火が放たれるなかで、どうか戦後まで残ってくれとの願いを込めて6万ページもの文書を地中に埋めたのだった。
世界に向かって叫べなかったことを
わたしたちはここに埋める
1942年8月3日
記録を埋めた19歳の青年デビッド・グレーバーの遺書より
©Jakub Certowicz, for the Jewish Historical Institute
リンゲルブルム・アーカイブ
ホロコースト史最大規模の一次資料
ワルシャワ・ゲットーの中でリアルタイムで書き綴られた命の記録は、未来の世代に届いてほしいという願いとともに地中に隠されました。そして戦後、瓦礫と化したワルシャワの街から奇跡的に発見されます。その数は30,000点にも及び、世界遺産に登録されています。
朗読
2022年5月3日上演
出典
書評論文「タデウシュ・エプシュタイン『リンゲルブルム・アーカイブ調査目録』 ワルシャワ、2011年 宮崎悠(『スラヴ研究』No.62)
『涙の杯―ワルシャワ・ゲットーの日記』 アブラハム・レビン著、A・ポロンスキー編、滝川義人訳(影書房)
撮影
LIFE.14
出演