記憶を歩く。in ブダペスト(後編)

2018/03/31

こんにちは、Kokoro事務局のみきです。

 

更新が遅くなりすみません。

前回に引き続き、もう少しハンガリーのお話についてお付き合いくださいませ。

 

ブダペストにあるもう一つの気になる記念碑は、街の中心部、

たくさんの観光客が行き交う場所にありました。

それがこちら。

 

 

一瞬、ん?何これ?、と思いますよね。そこら辺にありそうな…(といったら怒られるかな)

真ん中に天使、その上に鷲が飛びかかっている様子を表しています。

 

この記念碑は、2014年7月20日、ハンガリー政府によって突如として建てられました。

近年、右傾化が進んでいるといわれるヨーロッパですが、

特にハンガリーを含む東ヨーロッパ諸国ではその傾向が強く出ています。

2010年に再任したオルバン首相は、移民をハンガリーの「毒」だと言い、

「民族が混ざりすぎると問題が起こる。」といった過激な発言を繰り返しています。

 

ハフポスト日本版2017.3.9  http://www.huffingtonpost.jp/2017/03/08/hungary_n_15252372.html

 

そんな首相のもと、建てられたこの記念碑。

「1944年3月9日のハンガリーにおけるドイツの占領」と刻まれています。

コンセプトは、罪のない天使(=ハンガリー)に襲いかかる鷲(=ナチ・ドイツ)となっています。

 

……ん?ちょっとまって…

なにかおかしくありませんか?

そうそう、前回ご紹介した靴の記念碑のこと、思い出してみましょう。

あの靴は、当時ハンガリー人によるファシスト政党「矢十字党」が、

ドナウ川沿いでユダヤ人を射殺したことが記憶されるものでしたね。

 

ドイツの占領といっても、少なくないハンガリー人がドイツ軍を歓迎しました。

そして、ユダヤ人移送、虐殺のプロセスに加担していきます。

それもドイツ側の期待を超えるほどの大規模で組織的なものだったといいます。

それが歴史の示す事実です。ハンガリーにも加害者としての側面はありました。

この記念碑がなぜ論争を呼び起こすのか、という理由はそこにあります。

「罪のない天使」としてハンガリーを描くこと、

それは、自分たちの目を向けたくない過去を封じ込めること。

 

でもよ〜〜く見てください。記念碑の手前。

いろんな写真や品々が並び、何かが書かれた紙がたくさん掛けられています。

 

これは何でしょう。近寄って見てみます。

 

 

「この記念碑はハンガリー政府の指示により、ひそかに、大幅な遅れの後に、2014年7月20日、暗夜に紛れて建てられました。記念碑を横切る歩道脇には、記念の小石や個人的な品々、写真、本、資料が並べられています。これらは、専門家や地域社会との協議を持たずに断固として建てられたこの記念碑に表されている歴史の歪曲に憤慨した市民たちによってこの持ち込まれたものです。(…)ハンガリーの大学連盟の歴史家たちは満場一致で、この記念碑に暗示されるメッセージを、歴史を書き換える企みだとして非難しました。」

 

 

これらは、この記念碑に対するハンガリー市民の抗議でした。

右下にある米国旗は、これが英語で書かれているということを表しています。

これ以外にも、ハンガリー語、ドイツ語、フランス語、スペイン語、ヘブライ語、中国語…など、

十数の言語で書かれた紙がありました。(残念ながら日本語はありませんでした…)

 

ここでは、この記念碑が建てられてから現在にかけて3年以上、毎晩、市民が集まり抗議集会を開いているそうです。(…すごい!)

 

初めてこの記念碑の存在を知ったとき、このハンガリーの歴史の描き方から、

右傾的な政治を象徴する記念碑が建ってしまったな…と残念な気持ちになりました。

しかし、実際に現地に行ってみると、多くのハンガリー市民たちは抗議の意を示しているのだ、

ということがわかり、大きな希望が見えたのです。

 

記憶を伝えるということは、必ずしも歴史の事実が示されているとは限りません。

伝え手の意図がそこには必ず含まれてしまいます。

特に、国家によって建てられる記念碑は、その国家の描きたい歴史像が顕著に現れます。

そしてそれを見て、子どもたちは歴史を学びます。

しかしそこに「待った」をかけられるのは、過去の事実に謙虚に向き合い、

それを発する市民の勇気に他ならないのだと、この場所から私は感じました。

 

みなさんは、どう感じるでしょうか。

以上、ハンガリーからの報告でした。

 

みき

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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