右傾化するドイツ?それとも…
お久しぶりです。ベルリン在住のKokoroスタッフみきです。
ここ一週間、日本は台風、地震と、災害が続いているようで心配です。
被害に遭われた方々が一日でも早く元の生活に戻れますように、
そしてこれ以上被害が広がりませんように。
さて、ドイツではここ一週間、「ケムニッツ」という街の名前が、
新聞やテレビのニュースで連日トップ報道されています。
日本でも国際ニュースとして報じられているでしょうか…?
先月26日、ドイツ東部ザクセン州ケムニッツ市で35歳のドイツ人男性が2人の難民(イラク出身とシリア出身)に殺害された事件をきっかけに、
移民難民・外国人排斥を訴える「PEGIDA(ペギータ)」(西洋のイスラム化に反対する愛国的欧州人)、ネオナチなどの極右過激派によるデモ活動が活発化しました。
なかには、ナチス式の敬礼をしている人が多数いたり、
「デモ参加者が『ドイツ人に見えない』人々をびんで攻撃する」という暴力行為もあったりと、
背筋が凍り付くような情報が飛び交っていました。
(詳しくは、こちらの記事にて)
9月1日の土曜には、近年ドイツで支持率を上げている反移民・反イスラムを掲げる極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」と上記の極右集団の呼びかけで、
8000人もの人々がケムニッツに集結し、犠牲者追悼と反難民を訴えるデモ行進をしました。
ドイツではたいてい極右のデモが行われるときは、これに反対する市民がさらに多く集まり対抗デモを行います。
この日も多くの人が集まりましたが、数は3000人と極右デモを下回っていました。
ケムニッツを含むザクセン州は特に右派の勢力が強い地域ということもありますが、
この週末はドイツ全土になんとなく不穏な空気が流れていました… 。
(この日の様子が少しわかる記事です)
ドイツこれからどうなっちゃうのかな…
欧州の右傾化の波にドイツも飲み込まれてしまうのかな…
もしかしてまた同じ歴史を繰り返してしまうのかな…
この週末にそんな不安を抱いてしまっていたのは私だけではないようでしたが、
週が明けてみると、また驚かされるニュースが耳に入ってきました。
9/3の月曜日、このケムニッツで、人種差別反対を訴えるコンサートが開かれ、
ドイツ全土から、極右思想に抗議する人々が集まりました。
その数なんと……、6万5000人!!!
翌日の新聞では各紙の一面で報じられていました。
この日のスローガンは、"Wir sind mehr"「私たちはこれだけじゃない」
ドイツの極右化の象徴として報じられるケムニッツ。
それに対して、それだけがケムニッツではない。それだけが自分たち(ドイツ)ではない。
数においても考え方においても、私たちはもっといる。
そういう意味が込められています。
コンサートに出演したのは地元のロック・ミュージシャンです。
「コンサートを開いたからといって世界を救えるとは思わない。
しかし時には(人種差別に反対するのは)1人ではないと示すことが重要だ」
とメンバーの一人は話しました。
会場全体に、"Nazis raus!, Nazis raus!"「ナチスは出て行け!、ナチスは出て行け!」という声が響きました。
また、参加者の中には多くの地元住民もいました。
ある地元の若者が、
「東(ケムニッツ含むドイツ東部)は右派だけじゃないということを示したかった」
とインタビューに答えている姿が印象的でした。
(下記の記事で動画も見られます)
シュタインマイアー大統領は自身のSNSでこのコンサートをシェアし、
メルケル首相も極右思想の憎悪に立ち向かうよう、市民に呼びかけました。
個人的に、いまの日本と違うなと思ったのは、
こうやって政府がはっきりと極右・人種差別に反対する姿勢を示しているところです。
難民問題、社会の分断、いろんな問題を抱えるドイツ社会ですが、
まだまだ希望はあるなぁと感じています。
もちろん楽観的なだけではいけませんが、現状に嘆いているだけでも何も生まれませんからね。
以上、いろいろと考えさせられるこの一週間でした。